寒気が入り、一気に色づいた感のある山々を背に白山が二度目の雪化粧。絶好の撮影スポットには、たくさんの車。穏やかなお天気で散策を楽しむ人達の姿も見受けられました。植物園への道には、猪の痕跡が。地中の虫やヤマイモなどをもの凄い嗅覚で探し当てます。鍬でうったように、土が掘り起こされています。
植物園では、冬に向けての片付けや道作りが行われています。作業の足下には、タカネマツムシソウが一輪。他にも、タテヤマウツボグサやイブキジャコウソウが一輪。寒気と暖気の繰り返しに、植物たちも勘違いするのかもしれません。大きな種をつけたササユリは、件の猪がそのうちに目をつけて、いえ鼻をつけて掘り返されるのではと心配になります。
大切に育まれた植物たち。野生の生き物たちはおかまいなし。被害にあったら植え直し、雨で流れたら、道に又、溝を切ります。自然に抗うことなく、西山の植物園の秋がすぎます。
かもしか横の小さなガーデンでは、植栽作業が終わり、紛れもなく赤く色づいたオオバスノキとノコンギクはきれいでした。
そして、紅葉した桜の木の傍では、高山植物の苗たちを守っていた寒冷紗の骨組みの撤去作業が続いていました。もの思う秋、育苗箱の小さな芽が、空(くう)ではなく実(じつ)そのものの世界を語っています。

ヘドロと言うと聞こえはあまり良くありませんが、実は、この山岸家の池の沈殿物は周囲の落葉などが堆積したもので、上質の肥料にもなるとの事。
森和男さんのお墨付きの土を混ぜ込み苗を植えます。ニッコウキスゲの黄色い群落の中に、ハナチダケサシの白い穂が風に優しくそよぐ来シーズンのオープンガーデンが待ち遠しい!! たくさんの方々に楽しんで戴くための地道な作業です。
これは、ツバメオモト。秋の登山道で一際目立つ藍色の果実からは、茶色の種が出てきました。胡麻より一回り大きい位。浮いているのは、未熟で播いても発芽しないことが多いので、沈んでいる種を播きます。
シラタマノキの芥子粒よりも小さな種やキク科の植物の飛んでいきそうな種。水苔や鹿沼土、バーミキュライト等々、種に応じた苗床を作り、採取した日と播種した日を記録して、発芽を待ちます。
センジュガンピの苗をポットに植え替えです。余りのスピードに「ぼけてしまいます」と申し上げたら、「これでもゆっくりしてるんやで」・・・ふぅむ。そうだよねと何となく思った瞬間。こればかりは、機械で出来る事ではありません。愛情もって人の手がする作業です。
センジュガンピは、白山の砂防新道で出逢うことが出来ます。とても繊細で日本的情緒にあふれた花。 ナデシコ科センノウ属の多年草です。
今年、森和男さんは、長く園芸文化の発展に尽力された功績が讃えられ、(社)園芸文化協会より園芸文化賞を受賞されました。おめでとうございます!!
西山の植物園の上部、シコタンソウの回りには天然の肥料?野ウサギの糞が、以前にも増してそこここに。大きなものや小さなもの。親子、一族郎党でここをトイレに決めたのかな。石川県では標高1800m~2600mの日当たりの良い岩場に生育すると云うシコタンソウには、天然の肥料が何よりでしょうか。
タムラソウ。花の頃もすっくと伸びた立ち姿が潔いですけれども、ドライフラワーになってもその雰囲気は同じ。
秋の植物園は、植物たちの一生を見ることが出来る静かな空間です。